山形在来作物研究会

 島根県松江市には宍道湖から中海へ注ぐ大橋川が流れている。松江市在来の津田カブの名は大橋川の片岸に位置する津田町に由来する。津田町はかつて松江への野菜供給地として栄えたが、現在は宅地化が進み、津田カブの主な生産地が対岸の朝酌町や西尾町などに移っている。

津田カブは下半分が白い、赤い長カブで、見た目がとても美しいカブである。ルーツは滋賀県の日野菜カブと考えられている。江戸時代の末期に津田の篤農家、立原紋兵衛が良いものを選抜して現在の形に近いものにしたといわれている。津田カブは古く紋兵衛カブとも呼ばれた。曲玉状に尻の部分が曲がるのがかつての形であったが、近年は曲がりのない円錐形のものも選抜されている。後者の形のものが農協主催の品評会で最優秀に選ばれ、県の試験場で種子増殖がなされている。

この津田カブをはじめ、島根県のカブの食べ方として共通して興味深かったのは、乾燥しやすくするために長カブも丸かぶも収穫後カブの尻部分を削って葉を付けたまま寒風に干すことであった。また葉付きでぬか漬けにする。つまり、たくあん漬けにして食べるのが一般的であり、これを地元では本漬けと称している。本漬け以外には、酢の物や浅漬けがある。たくあん漬けにするときにカブの水分を抜く方法には2通りある。一つは寒風に干して水分を抜く方法、もう一つは酢で漬ける方法がある。酢で水分を抜くと甘みも一緒に抜けてしまうが、干して水分を抜くとカブの持ち味を生かした漬物になる。

播種は9月5・6日から25・26日ころで、収穫は11月13日以降とのこと。寒くなるにつれて甘みを増し、干してもよく乾燥するようになる。山形県の在来野菜と状況はよく似ているが、津田カブの生産も高齢化が進み、後継者がいないことが心配されている。(島根県探訪記ーおわり、原隆志先生、現地の案内ありがとうございました)


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